「GLP-1受容体作動薬」とは?
GLP-1受容体作動薬は、GLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)という体内ホルモンの働きを補う薬です。GLP-1は腸から分泌されるホルモンで、インスリン(糖代謝を調節するホルモン)の分泌を促進することで血糖値を調整する重要な役割を持っています。このため、GLP-1受容体作動薬は2型糖尿病の治療薬として厚生労働省に承認され、広く使用されています。
注射薬の種類
主な注射薬には以下のようなものがあります。
主な有効成分 | 投与の頻度 | 1回の上限量 | |
オゼンピック | セマグルチド | 週1回 | 1.0mg |
サクセンダ | リラグルチド | 1日1回 | 3.0mg |
マンジャロ | チルセパチド | 週1回 | 15mg |
ビクトーザ | リラグルチド | 1日1回 | 1.8mg |
オゼンピック
日本では、GLP-1受容体作動薬は2型糖尿病治療薬として承認されていますが、肥満治療を目的とした使用は承認されていません。この薬は週に1回注射するタイプです。
一方で、同じ成分であるセマグルチドを使用した「ウゴービ(Wegovy)」は、肥満症治療薬として日本でも承認されています(承認日:2021年6月4日)。これにより、肥満を伴う特定の患者さんに対して、体重管理の選択肢として利用されています。
サクセンダ
日本ではGLP-1受容体作動薬は肥満治療目的で承認されていませんが、アメリカのFDA(米国食品医薬品局)をはじめ、カナダやEUなどの国々では肥満治療薬として認可されています(承認日:2014年12月23日)。これらの国では、肥満や過体重を持つ特定の患者に対する治療オプションとして利用されています。
マンジャロ
この薬は、GLP-1受容体だけでなく、GIP(グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド)受容体にも作用する点が特徴です。GIPは、GLP-1と同様にインスリンの分泌を促進し、食欲を抑制する効果を持つホルモンです。
日本では、この薬は2型糖尿病治療薬として承認されていますが、肥満治療目的での承認はされていません。一方、アメリカのFDAでは、同じ成分を使用した薬が肥満症治療薬として承認されており(承認日:2023年11月8日)、肥満管理の選択肢として使用されています。
ビクトーザ
成分がリラグルチドである薬は、サクセンダと同じ成分を使用しています。日本では、2型糖尿病の治療薬として承認されていますが、肥満治療目的では承認されていません。
一方、サクセンダはアメリカのFDA(米国食品医薬品局)をはじめ、韓国やEUなどで肥満治療薬として承認されており(承認日:2014年12月23日)、肥満症治療の選択肢として広く使用されています。
注射薬の使い方
GLP-1受容体作動薬の注射薬は、1日1回または1週間に1回、自分で注射します。毎回同じ時間に注射することが推奨されています。注射自体は1分ほどで終わりますが、具体的な手順は以下の通りです(オゼンピック、サクセンダ、ビクトーザの注射方法に基づきます。マンジャロは注射器が異なるため、手順も異なります):
- 注射のキャップを外す
- ゴム栓をアルコール綿で拭く
- 付属の針を取り付け、2つのキャップを外す
- 投与する量に合わせてダイヤルをセット
- わき腹や太ももなどの脂肪の多い場所に垂直に針を刺す
- ダイヤルが「0mg」になるまで注入
- 注入後、数秒待つ
- ボタンを押したまま注射器を抜く
- ①のキャップをつける
- 針を外す
これで注射は完了です。手順を守り、清潔を保つことが大切です。
注射薬の痛みは?
GLP-1受容体作動薬の注射針は非常に細く、髪の毛ほどの太さしかないため、注射時の痛みはほとんど感じないとされています。この細い針により、注射が比較的快適に行えるため、痛みを心配することなく使用することができます。ただし、注射を行う場所や個人差により、わずかな違和感を感じることもあるかもしれませんが、一般的には痛みはほとんどありません。
注射薬の副作用
GLP-1受容体作動薬の注射薬を使い始めると、便秘、下痢、胃のむかつきや不快感、吐き気などの軽度な副作用が生じることがあります。これらの症状は一時的であることが多いですが、使用を続けるうちに改善することが一般的です。
また、重大な副作用としては、低血糖や急性膵炎のリスクがあります。特に、嘔吐を伴う持続的な激しい腹痛が現れた場合は、急性膵炎の可能性があるため、速やかに医師に相談することが重要です。このような症状が現れた場合には、早期に対応することが必要です。
低血糖症状について
GLP-1受容体作動薬は、血糖値を下げるために使う薬です。そのため、低血糖状態になることがあります。
以下のような症状が出たらすぐに糖分(甘いジュース、あめなど)を摂取し、医師に相談してください。
- 脱力感
- 動悸
- 冷や汗
- 強い空腹感
- 手足の震え
- 意識が低下するなど
注射薬を使用できない方
GLP-1受容体作動薬の注射薬は、体質や持病によっては処方できない場合や、処方に際して注意が必要なことがあります。以下のような方は、必ず医師に相談してください:
- 糖尿病治療中
- 膵臓の異常、腎機能障害、肝機能障害があったことがある
- 重度の胃腸障害がある
- 甲状腺腫瘍の家族歴や既往歴がある
- 妊娠中または妊娠の可能性がある
- 産後まもない
- 授乳中
- 高齢
- 18歳未満
- 極度に痩せている
また、他の薬やサプリメントを服用している場合、薬同士の相互作用によって効果が弱まったり、逆に作用が強くなりすぎて健康に悪影響を及ぼす可能性があるため、使用前に医師に相談することが重要です。
併用に注意が必要なお薬
GLP-1受容体作動薬は、SU薬(スルホニル尿素薬)やインスリンなど、他の糖尿病治療薬と併用しないでください。これらの薬剤はいずれも血糖値を下げる作用があるため、併用すると血糖値が過剰に下がる可能性があり、低血糖などの副作用が生じるリスクがあります。そのため、併用による健康への影響を避けるために、医師の指示を仰ぎ、必要な薬剤のみを使用することが重要です。
注射薬使用時の注意点
GLP-1受容体作動薬の注射薬を安全かつ効果的に使うために、以下のような点を心がけましょう。
用法用量を守る
投与間隔を空けすぎると効果が得られない場合があります。また、量を増やしたり頻度を高めたりすると、副作用のリスクが高くなることがあるため、医師の指示に従い、決められた用法用量を守りましょう。
しばらく続ける
1回の注射で即効性を感じるわけではなく、効果を実感するためには3~6ヶ月の継続が必要です。食欲抑制などの効果に体が慣れるまで、焦らず続けることが重要です。
食事にも気を遣う
薬の効果により食事量が減ることがありますが、栄養不足を避けるためにはバランスの取れた食事を心がけ、必要な栄養素をしっかりと摂取することが大切です。特に糖質や脂質を控えることが推奨されますが、体に必要なビタミンやミネラルを含む食品を意識的に摂るようにしましょう。
通販でも入手できる?
日本では、医師の処方なしにGLP-1受容体作動薬の注射薬を入手することはできません。最近では、個人輸入という形でネットで購入するケースが見られますが、この方法には以下のようなリスクがあります:
- 未承認薬や偽物の可能性がある
- 副作用が生じた場合、対応が難しくなる
また、処方されたお薬を医薬品販売業の許可がないにもかかわらず、フリマサイトなどで販売(転売)することは、薬機法違反に該当するため、法的な問題が発生する可能性もあります。
そのため、GLP-1受容体作動薬を使用する際は、必ず医療機関で処方してもらい、信頼できる医師の指導のもとで使用するようにしましょう。